オーディオブックによる読書の可能性~シンポジウム「超高齢社会と読書」から

シンポジウム「超高齢社会と読書」

2019年6月10日に日比谷図書文化館で開催された、シンポジウム「超高齢社会と読書」に参加しました。

当日は大雨にもかかわらず、会場は満席で、関心の高さが窺えました。

高めの年齢層の方が多いのではと予想していましたが、割と若い感じの方もたくさん見かけることができました。

私が座った席の並びには、男女の若い学生らしきグループが座って、仲間同士で中国語で話し合っていました。大学の授業の一環で来たのかな?留学生?とやや不思議に思いながら、少し気の引き締まるような思いがしました。

このシンポジウムでは、オトバンクの上田渉さんが登壇していたので、お話されていた内容を簡単にまとめてみたいと思います。

オトバンクはオーディオブックのサービス「audiobook.jp」(旧:FeBe)を展開している会社です。

「audiobook.jp」では現在約2万7千点を配信しており、会員数は80万人を突破とのことです。

配信のジャンルとしては、当初よりビジネス書/自己啓発書を中心にしていましたが、最近は文芸などジャンルのすそ野を広げているようで、最初は圧倒的に男性会員が多かったのが、今は男性6割、女性4割となっているとのこと。

年齢層で最も多いのが30代(26%)、次いで40代(25%)、20代(20%)と続くようで、働き盛りの世代に好まれていることがわかります。

図書館などに置かれている録音図書との違いとして、以下のことがあるようです。講演スライドをそのまま引用させてもらいます。

録音図書 オーディオブック
朗読者 音訳ボランティア ・声優・俳優・アナウンサー等のプロ
・著者自身
作り方 一定の基準に基づき、文字、図、表等をできる限り忠実に音声化 文章・内容に合わせて多様な表現をして音声化
聴取者 視覚障碍者 健常者・視覚障碍者

録音図書に比べるとよりエンターテインメント性を打ち出していることがわかります。

また、以前(今も?)あった、朗読カセットブック等と、内容的には違いはないようなのですが、カセットブックに比べて価格が抑えられていること、スマホアプリで使うため、利用のためのハードルが低いこと等が挙げられます。

カセットブックと言えば、「売れない」イメージだったのが、今はオーディオブックの市場としては60億円規模に達し、今後も成長が見込まれるものとされています。

上田さんはオーディオブックが健常者のあいだに広まることが、視覚障碍者の利用にもつながるとお考えのようで、それには上田さんの祖父のことがあるそうです。

上田さんの祖父は書斎を持つくらいの読書家でいらっしゃったようですが、晩年の20年ほどは緑内障のため、読書の機会を奪われた状態でした。当時から録音図書は存在していたのですが、一般に認知されていなかったため、周りの方も録音図書のことを教えてあげることができなかったそうです。

そのため、まずは健常者の間でオーディオブックを広めて、一般の人にも知ってもらうことが重要とお考えになったようです。

それでは、視覚障碍者への読書機会を保障する観点から、川越市の読書への取り組みを見てみたいと思います。

川越市障害者支援計画

平成30・31・32年度「川越市障害者支援計画」によると、平成28年度の統計になりますが、市内の視覚障碍者は678人いらっしゃいます。

計画の中に、「主要課題3 社会教育 の充実」という項目があり、以下の記述があります。

施策 施策説明 担当課
図書館における障害者サービスの充実 障害のある人の読書等の機会を確保するため、図書館の環境を様々な障害特性に対応できるよう整備するとともに、様々な形態の資料の充実と提供を進め、当事者の⾃⼰啓発等の文化的⽣活の促進に努めます。  中央図書館
音訳者の育成 必要に応じて音訳者の養成講座や研修会を開催し、音訳者の技術向上を図り、視覚障害者等のコミュニケーション⼿段の確保と充実に努めます。  中央図書館

これだけだと今一歩漠然としているので、もう少し詳しく見ていきたいと思います。

川越市立図書館 障害者サービスの状況

川越市立中央図書館が出している「平成30年度 図書館要覧」という資料の中に、「障害者サービスの状況」という項目があります。

これをみると、録音図書の貸出が1年間で1,903タイトルあったことがわかります。

また、録音図書の作成(8タイトル、利用者の要望に沿って作成したものは48タイトル)、対面朗読(324人、642時間)などのサービスも行われていました。

「各種事業の状況」として図書館で行われているイベントなどが一覧になっていますが、障害者サービス関連のものを抜き出してまとめてみました。

中央図書館

事業名 参加者(人) 内容
障害者サービス特別展示 図書館の障害者サービスについての展示
新規音訳者養成講座 延べ46 図書館で活動する音訳者を新規に募集・養成する。
夏休み子ども展示教室 4 点字についてのおはなし、館内ツアー、点字の読み書き。
手話でたのしむおはなし会 8 聴覚障害児への読書推進とともに健常者にも手話にふれてもらい理解を深める。

西図書館

事業名 参加者(人) 内容
バリアフリー映画会 32 上映作品:「BALLAD」視聴覚に障害のある方も楽しめる、音声による場面説明・字幕付き映画を上映。

高階図書館

事業名 参加者(人) 内容
バリアフリー映画会 50 上映作品:「武士の家計簿」高階公民館との共催事業。

読書だけでなく、映画会や手話のおはなし会なども行われているんですね。

オーディオブックを図書館で利用する方法としては、電子図書館の仕組みが必要とのことですが、川越市では電子図書館は導入されていませんので、残念ながら図書館を通してオーディオブックを利用することはできません。

以前より入手しやすくなっているとはいえ、やはり紙の本に比べるとオーディオブックの割高感は否めません。

今後ますます充実していくオーディオブックを、もっと気軽に利用できる環境が整って、健常者も障碍者も隔てなく音声を通した読書が楽しめるようになると良いですね。

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