川越市、SDGs指数1位は本当?~SDGs/ESDの取組の実際~

「市版SDGs調査2020」というものが行われて、川越市が1位になったとのことです。

それは、めでたいですね。。。

でも、、、ちょっと違和感が残ります。

というのは、全国トップを取れるほど、川越が特に積極的にSDGsに取り組んでいるとは感じられないからです。

まぁこういうランキング物はいろんな利害関係者の思惑が交錯すると聞くし、注意して受け取らないとな、とは思います。

でも、自分が単に川越市の取り組みを知らないだけなのかも、とも思うので、実際のところどうなのかを探ってみました。

まずは、「市版SDGs調査2020」とは何か?というところから始めたいと思います。

「市版SDGs調査2020」とは?

こちらが、川越市がSDGs指数1位となったことを華々しく(?)報じた記事となります。

地域の持続性調査、1位は川越市。愛着・定住意欲は福岡市、満足は豊橋市(市版SDGs調査2020)

株式会社ブランド総合研究所というところが実施した調査です。

この会社は、「地域ブランド調査」という大規模な調査を2006年から毎年実施しているので、割と信頼できるところかな、と思います。

「市版SDGs調査2020」は今回が初めての実施です。その概要をざっと見ておきます。

・ 調査方法 インターネット調査
・ 調査対象 政令指定都市、中核市、県庁所在市の計83市
・ 回答者 登録調査モニター(15歳以上)から、対象市ごとに市民を抽出
・ 回収数 13,753人(各市から約200人を目標に回収)
・ 有効回答数  13,270人 (不完全回答および非居住者を除いた)※各都道府県は約160人(一部で有効回答数が少ない市がある)
・ 調査時期 2019年11月19日~12月23日
・ 調査項目 基本指標: 幸福度、満足度、愛着度、定住意欲度、SDGs認知度、金融商品への投資経験などの6項目

市民の悩み: 「低収入・低賃金」など50項目
社会として取り組むべき課題: 「農林水産業の衰退」など50項目
回答者属性: 年齢や性別、婚姻、子供の有無、世帯年収、居住形態など

この中から、「幸福度」および生活の「満足度」「愛着度」「定住意欲度」の計4つの指標の平均点が出され、「SDGs指数」としてランキングが作られています。

川越市は、幸福度1位、満足度4位、愛着度10位、定住意欲度13位で、その平均点である総合指数が1位となり、全国の名だたる83都市のトップに輝くこととなりました・・・

う~ん。。。

「幸福度」「満足度」「愛着度」「定住意欲度」の4つの平均点が「SDGs指数」になるっていのうがどうもしっくりこないんですよね。

住民が幸福で定住意欲の高い地域は、未来に向かって持続的な発展が見込まれる、という仮説の元、悩みや課題がそれらの基本指標にどのように影響しているのかを明らかにします。

と書いてありますが、住民の自己申告だけで、SDGsを謳ってよいのだろうか?

SDGsの17のゴール(と169のターゲット)の達成度合いを評価するべきなのでは?と思ってしまいます。

調査結果報告書は大変高価で(15万円!?)、とても個人で手に入れられる値段ではないし、公表されている内容だけでは本当にSDGs指数と言えるものなのか、いまいちしっくりきません。

そこで、川越市が本当にSDGs1位にふさわしいまちなのか、自分で調べてみることにしました。


SDGsとESD(持続可能な開発のための教育)

とは言っても、SDGsの17のゴール(と169のターゲット)について、川越市の取組と達成度を1つずつ見ていくのは、とても自分の手には余ります。

そこで、SDGsの17あるゴールの中から、「質の高い教育をみんなに」という目標について、焦点をあててみたいと思います。

この目標は、「すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する」というテーマのもと、10個のターゲットから構成されています。

ターゲットには、基本的な教育環境の整備やそこへの平等なアクセスの確保読み書き能力及び基本的計算能力の習得など、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、アフリカ諸国を対象とした内容が打ち出されています。

日本にとっては、次のターゲットが特に重要と思われます。

2030 年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。

「男女の平等」や「文化多様性」などは日本にもまだまだ課題が多い分野ですね。

ちなみにこの目標(質の高い教育をみんなに)について取り上げる際には、必ずと言っていいほど出てくる言葉があります。

ESDEducation for Sustainable Developmentの略)という言葉で、「持続可能な開発のための教育」と訳されています。

ESDとは、地球に存在する人間を含めた命ある生物が、遠い未来までその営みを続けていくために、これらの課題を自らの問題として捉え、一人ひとりが自分にできることを考え、実践していくこと(think globally, act locally)を身につけ、課題解決につながる価値観や行動を生み出し、持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動です。

文部科学省ホームページより
http://www.esd-jpnatcom.mext.go.jp/about/index.html

だいぶ壮大なことになっています。

SDGsが出始めるよりもだいぶ前から使われている言葉ですが、その理念・目指すところはどちらも同じです。

ESDの方が早くから取り組まれている分、特に教育分野においてはESDをそのままSDGsに当てはめて語られることが多いです。

持続可能性の教育は、持続可能性を根本原理とする世界観の教育であり、生命、自然、経済、社会、政治、文化、教育の持続可能性を実現する個々の内容の教育であり、持続可能性を実現する生き方と倫理の教育であり、持続可能な社会を実現する行動の教育である。

『持続可能性の教育』教育出版 , 2015 p.6より

上記の通り、ESDは、非常に幅広い概念ですが、具体的には環境教育や自然体験教育、人権教育や平和教育として実践されていることが多いようです。

ここからは、今まで見てきたことを踏まえ、さらに「社会教育」に絞ってみていきたいと思います。


ESDと社会教育~先進事例・岡山市公民館の取組~

社会教育というと、博物館・図書館・公民館などが思い浮かびます。

ここでは、ESDと強く結びついた取り組みとして、岡山市公民館の取組についてみてみたいと思います。

佐藤一子著『「学びの公共空間」としての公民館』では、岡山市公民館について、以下のようにその先進性・独自性が高く評価されています。

公民館が主催し、あるいは諸団体のネットワークのもとで具体化されている実践事例をみると、自然体験、農業体験、食材と郷土料理、歴史再発見、おもちゃのリユース、子どもの居場所づくりや特別支援学校のサポーター、夏休みフリー塾、日本語教室、高齢者のカフェやESDカフェなど、それぞれの地区の地域資源や人とのつながりを活かしながら、「環境」「共生」をテーマとする取り組みがなされている。
その一つひとつは他の地域の公民館でも取り組まれている実践と共通する面も多いが、詳細な地域マップの作成による地域資源や地域課題、地域の将来像の共有、取り組みの中期目標作成と年度ごとの評価、教材づくりやESD検定などの啓発型事業、子どもから大人まで共に参加する体験型事業、演劇や映画などによる表現活動、地域環境調査から公共事業提案型にいたるまで、多彩な学習がESDという包摂概念によって体系的に展開されている点はきわめて先進的で、独自性が高い。

『「学びの公共空間」としての公民館』pp.153-155

公民館の数は岡山市全体で37館に及び、それぞれの館では、質・量ともに充実した講座が開催されています。

  • 中学生や高校生がボランティアとなって、子どもとの遊びや学びを自分たち自身が考え創り出す経験の場となる「夏休みフリー塾」
  • 地域内の全世代合同で地域が抱えている課題に取り組む総合プロジェクトで、水辺の環境調査や環境映画の作成、伝統行事の復活などに取り組む「岡山市京山地区ESD環境プロジェクト(岡山KEEP)」
  • 知る人ぞ知る、史跡、人物、史実など、まちの宝とも呼べる多くの財産を映像として記録し、次の世代に伝えていく「地域紹介ビデオづくり」

その他にもさまざまな取組があり、「れんめんめん-公民館ESD活動実践集-」としてまとめられていますので、興味のある方は是非ご覧ください。

岡山市立公民館基本方針によれば、岡山市の公民館は、2000年にESDを公民館事業の柱に位置付けました。

以降、ESDの視点から公民館事業の見直しを進め、持続可能な地域づくりの多様な問題を扱って、学びから実践へとつなぐような取組を広げています。

また、2014年に開催された「ESD推進のための公民館-CLC国際会議」においても、岡山市公民館の取組は、成功事例として世界に発信され、その活動は国内にとどまらず世界の社会教育関係者に知られるところとなっています。


川越とESD、公民館や民間の取り組みなど

川越市内には、19の公民館があり、各館において様々な事業が実施されています。

川越市公民館の事業一覧(ページ下部に各館の事業一覧へのリンクがあります)

地域の歴史を学ぶ講座や、環境学習講座、人権教育指導者養成講座など、取組は充実しており、岡山市と比べ大きく遜色があるという訳ではありません。

第三次川越市生涯学習基本計画では、「現代的・社会的課題に対応した学習機会の充実」として、以下の取組が掲げられています。

①文化芸術活動の充実
②郷土文化の伝承の推進
③生涯スポーツの推進
④健康づくりを支援する活動の充実
⑤誰もが暮らしやすい多文化共生のまちづくりの推進
⑥国際感覚に優れた市民の育成
⑦男女共同参画に関する学習機会の充実
⑧環境に関する学習機会の充実
⑨消費生活のための学習機会の充実
⑩情報化社会に対応した学習機会の充実
⑪就労支援のための講座等の充実
⑫農業体験学習の充実

ESD(持続可能な開発のための教育)の考え方に、重なる部分はかなりあります。

但し、ESDという言葉はこの基本計画の中には現れません。

行政ではなく、民間の方の取組はどうでしょうか?

例えば、學のまちkawagoe

本ブログでも参加レポートをさせていただいております。

蓮馨寺イベント、學のまちkawagoe「三芳野の雁-伊勢物語の川越-」

「文学から読み解く川越」シリーズや、「まちをめぐって活版印刷体験!」など、文化的な視点から、川越の地域資源を掘り起こし発信する活動を行っています。

活動を開始してから日の浅い団体ですが、今後の取組に注目です。

2019年で21回を数え、環境について考えるイベントとして川越で長く続いているのが、アースデイ川越

2019年はSDGsについての理解を深める様々な催しが開催されました。

SDGs体験ブースとして、男女で服装をチェンジして異なる性別を体験する「ジェンダーで遊ぶ!?〜服装チェンジ体験〜」や、シートを使って採点する「環境に配慮した行動×SDGsチェックシート」など、楽しく遊びながら学べるイベントとなっています。




今回は、ESD先進市の岡山市の取組を紹介しながら、川越市の取組をいくつか見てきました。

川越市では「ESDという包摂概念によって体系的に展開されている」わけではないものの、ESDに類似した活動は様々に執り行われているようです。

SDGs総合指数1位という調査結果・手法には、やや疑問を残すものの、川越市が実践してきた活動は、「持続可能性」につながる要素を十分に持っているのではないかと思います。

せっかく、SDGs調査において話題になったのですから、この波に乗ってもっと前面に市におけるSDGsの取り組みを押し出していってもらいたいですね。


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